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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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台風の日

野分の誕生日のおはなし。
今年は忙しくて書けないかと思ってました。でもやっぱりお祝いしたい、と短いながらもなんとか書けて良かったです。

                              2020.9.30


「あーあ、またダメかー」
スマホを握りしめたまま宮城教授が椅子の背にひっくり返った。
「また占いですか?」
「違う違う、台風」
「台風?」
その言葉に眉間にぎゅうっとシワが入る。
「そ。こっちに来る前に熱帯低気圧になっちまったってさ」
「よかったじゃないですか」
「えー」
「休講になるのは困るんで台風なんて来なくていいんです」
「そうか?たまにはめちゃくちゃ大型で強い風に巻きこまれちゃうのも悪くないと思うんだけどなー」
そう言って座っていた椅子をくるくると勢いよく回した教授の手が積み上げていた本の山に当たった。
「あっ、」
次々と崩れていく本とその中に消えていく教授。
「上條ッ、助けて」
「巻きこまれて良かったですね」
「待って待って」
「すみません。次、講義があるんで」
ドサドサと続く本雪崩の音と教授の呼ぶ声に蓋をするようにドアを閉めた。

◆◆◆

「疲れた…」
玄関のドアを開けてため息を吐く。
気がつけば夏は過ぎ、すっかり日が短くなっている。
夜の色に満ちた部屋は今日も静かで、ただ静かで。ひんやりとした空気だけをたたえて俺を待っていた。
研究室の崩れた本の片づけをしたせいで、なんだか全身が埃っぽくてしかたがない。
「まずは風呂だな」
風呂の支度をして、着ていた服を脱ぎ捨てるように脱衣籠につっこんでいると玄関のドアが開く音がした。
「ただいまです」
バタバタと騒がしい足音が近づいてくる。
「ただいまです!」
「おかえり、つか、そんなに何度も言わなくても聞こえてるっての」
「ヒロさん」
野分のバカみたいな笑顔が迫り、長い腕が巻きついてくる。
「ただいまです…」
「…おかえり」
「ずいぶん準備がいいですね」
「風呂入るとこだったんだよ」
「じゃあ俺も入ります」
「何でそうなる」
「せっかくなので」
「頼むからちゃんとした日本語を」
訳の分からないことを言いながら服を脱ぎ捨てていた野分に、風呂場に押しこめられる。
「ダメですか?」
二人揃ってシャワーの下に入ってしまってから、そんなことを聞くのは反則だろうが。
「今日は特別だ」
「ありがとうございます」
大型で強いセイリョクの台風に巻きこまれながら、その中心にいる心地よさを味わうように唇を重ねた。
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