frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
三連休
- 2020/11/23 (Mon)
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ヒロさんお誕生日おめでとう。急いで書いたらタイトル浮かばなかった……
2020.11.22
2020.11.22
連休前日
「明日から三連休だなー」
金曜日最後の講義を終えた宮城教授は、そう言って自分の椅子に跨るとくるりと回転させた。
「そうですね」
「あれ、嬉しくないのか?」
「特に予定もないですし」
「えー、もったいなーい」
「もったいない?」
「お前さ、この週末は超ラッキーなんだぞ」
「超ラッキー?」
「この占いによれば、上條は、待ち人来たる。探し物現れる。仕事受けるべし。ラッキーアイテムはロウソクときた」
「なんですかソレ」
「ほんとだって、ほらほらー」
目の前に出された新聞に目を通せば、占いコーナーには確かにそう書いてあった。
「でも俺、こういうのはあまり信じてないんで」
「何言ってんだよ。いいことが書いてある時は楽しんだほうが幸せだろ」
広げた新聞を持ったまま椅子を回していた宮城がピタリと止まった。
「そっか上條、明後日が誕生日か」
「まあ、一応」
「おめでとう〜マイスイートハニー」
巻きついてくる腕の重さに眉を顰める。
「抱きつかんで下さい」
「かたいこと言うなって。しかし連休中の誕生日だからって、あんまり羽目外すなよ」
「だから特に何もしませんよ。俺のことより、教授、連休明けにある学会の資料はもうできてますよね」
「あ」
「教授?」
「上條お前、明日は特に予定ないんだよな」
「予定はありませんが」
「頼む!明日出てきて手伝ってくれ」
「マジですか……」
仕事受けるべしとはこのことか、と新聞記事を睨みつけた。
連休初日
「できました」
刷り上がった資料の最後の一部を宮城に渡す。
「ありがとう上條、助かった」
「せめてもう少し早めに頼みますよ」
「わかってるって」
「前回も全く同じことを言いましたよね」
「次こそ大丈夫だって、信用しろ」
「信用はしませんけど、頼みます」
「上條が冷たい」
「はいはい」
よよよ、と泣き真似をする宮城を横目にコートを着る。
「とにかくお疲れ様でした」
暗くなった大学を後にする。
貴重な三連休を一つ潰してしまったが、どうにか資料を整えることができてよかった。いつもふざけているように見える宮城教授だが、こと研究に関しては一切妥協しない人だ。そんな姿勢を尊敬しているからこそ宮城の下で働いているのだが、妥協しない姿勢のせいでいつも学会の準備が直前まで終わらないことだけはどうにかして欲しいと思う。
誰もいないマンションにたどり着いてホッと息を吐く。
何の予定も入ってなくて本当によかった。
夕飯もそこそこに風呂をすますとベッドに入りこんだ。
連休二日目
ずっと探していた本が見つかった、と秋彦から連絡が入った。
急いで取りに行くと、本と一緒にワインを渡された。
「どうしたんだよコレ」
「誕生日だろ」
「まあな」
「で、今日は祝ってもらえそうなのか」
「余計なお世話だっての」
「なるほど」
煙草の煙を吐きながら秋彦がニヤリと笑った。
「何がおかしいんだよ」
「いや、弘樹の誕生日がいい夫婦の日だというのがなんとも感慨深い」
「桃の節句に言われたくねぇな」
「それもそうか」
「まぁ、コレはありがたく貰っていく」
「飲みすぎるなよ」
「わかってるって」
キッチンから美味そうな匂いのしてきた秋彦の家を後にする。
腹減ったな。
赤く色づいた夕空のせいなのか、少し冷たい秋の風のせいなのか、子どもの頃のような空腹感と人恋しさがまぜこぜになった寂しさが胸の奥を揺らす。何か食う物を買って帰ろうと店のある方へ足を向けたその時、スマホが震えた。
『ヒロさん』
野分の声は電話越しでも温かい。
『今日は帰りますから』
言葉が胸の中にひたひたと沁みこんでくる。
寂しそうだった夕焼けが、あたたかな色に見えてくる。
少し早足になりながら、真っ直ぐに二人の家へと向かった。
「すぐできますから」
野分がキッチンに立っている。
エプロンをかけて。
「あんまり飲みすぎないで下さいね」
「わかってるって」
ちょっと味見のつもりが、秋彦のくれたワインは飲みやすく、気がつけばボトルは半分くらい空になっていた。
「できましたよ」
「美味そう」
「乾杯しましょう」
エプロンを外そうとした野分の手を掴む。
「そのままでいい」
「え?」
「エプロン、つけたままでいい」
「そうですか」
「ん。お前、エプロン似合うから」
野分の顔が赤くなった。
「ヒロさん、それってどういう」
「いいから早く乾杯しよーぜ」
「そうですね。あ、ケーキも出してこないと」
野分がホールケーキを出してきた。しかも、プレートまでついている。
「お前……よくこんなの頼めたな」
「ロウソクもありますよ」
『ヒロさん誕生日おめでとう』と書かれたプレートの周りに、細くて長いロウソクが次々に刺されていく。
「お前、何本刺す気だよ」
「ちゃんと歳の数だけありますから」
灯りの落とされた部屋で、ロウソクの炎が野分の顔を照らす。
ハッピーバースデーの歌まで歌われてしまい、あまりにも照れくさくて急いでロウソクを吹き消した。
暗くなった瞬間、唇に熱が与えられた。
「おめでとうございます」
「おう」
暗い部屋の中、真っ黒な瞳が俺を見つめている。
「今日は俺、エプロンつけたまま頑張りますね」
「へ?」
よくわからない台詞とともにもう一度与えられた口づけを受け取った。
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プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中
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