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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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Candle of the birthday

ミスの二人の誕生日がわかったので、お祝いに。

2016.1.





「なあ、ロウソク何本にする?」
エアコンと二人の熱で暖められた寝室の中。気怠さに包まれながらゆるりと落とされた問いに、上掛けを直していた手が止まる。
「そうですね」
考えている間に規則正しい呼吸がし始める。
答えのかわりにそっと背中に唇を落として、嬉しい悩みを一人でゆっくりと味わった。


◇  ◇  ◇


「かをる」
突然腕を掴まれて、食器を載せたトレーがカタカタと揺れた。
「こんなところで何してんだよ」
「後片付けを」
ようやく揺れが収まったトレーを持ったまま答えて歩き出す。
「今日がどんな日か分かってんのか?」
棚へ食器を戻し終えて振り向くと、龍一郎様は腕を組んで立っていた。どうやら少し機嫌が悪いようだ。
「龍一郎様」
「うん」
「あの、プレゼントでしたら部屋に置いてあるので後から」
「そーじゃなくて」
大人のように糊のきいたシャツの襟元へ手をやると、龍一郎様はきちんと締められていたネクタイをぐいっと引っ張ってしまった。
奥様が選ばれたジャケットもネクタイもとてもよく似合っているのに、もったいない、ぼんやりとそんなことを考えたのが伝わったのか、龍一郎様が僕のいつものセーターをジロジロと見ている。
「かをるも今日は誕生日だろ」
「はい」
「忘れてたわけじゃないよな」
忘れるわけありません
同じ誕生日なんだから
「ちゃんと・・お祝いしてもらったのか?」
「龍一郎様の誕生日パーティの手伝いの方が大切ですから」
今年のケーキも立派だった。
みんなに囲まれて勢いよくロウソクを吹き消す龍一郎様に拍手を送るのはなによりも嬉しい。
だけど少し不安になる。
僕はあと何年、こうして一緒に誕生日を迎えられるんだろう
「お前の分のケーキも用意してるんだろ?」
「はい」
自分のケーキに立てるロウソクの数が増えるたびに、ここから離れなければならない時が近づいてくる気がしてしかたがなかった。
「よし。かをるのケーキ、俺も一緒に食べてやるよ」
「まだ足りないのですか?」
「いいだろ、別に。早く行こうぜ」
「でも、まだやることが残ってます」
「手伝いなんていいって」
グイグイと引っ張る腕をそっとおさえた。
「僕は旦那様のお役に立ちたいのです」
できるだけ長くここにいられるように。
「龍一郎様、お誕生日おめでとうございます」
あらためて伝えてお辞儀をする。
できるだけたくさん龍一郎様をお祝いできますように。
顔を上げると、もう龍一郎様はいなかった。
怒っちゃったのかな・・・。
それでも僕は僕の仕事をしたかった。

ただずっとそばにいるために。


◇  ◇  ◇


「朝比奈ー」
「なんですか?」
「ロウソクがないぞ」
なにやら落ち着かない様子に思わず頬が緩んだ。
テーブルをのぞきこむ姿が、あの頃と重なって見える。
「ちゃんと置いてありますよ」
「あるって・・・これしかないぞ」
細いロウソクを摘んで不思議そうな顔をしている。
「それでいいんですよ」
冷やしたシャンパンとグラスを並べてから、持っていたロウソクを受け取る。
「なんで1本だけなんだよ」
「初めてですから」
1本だけのロウソクをケーキに刺す。
「二人だけで過ごす誕生日は、今年が1年目なので」
明かりを消した部屋の中でロウソクに火を灯した。
炎に照らされた顔が少しだけ赤いのは気のせいだろうか。
神様を信じているわけではないけれど、この日だけは信じてみたくなる。
愛する人と同時に年を重ねることができる日。

並んで炎を見つめる。
「なあ、一緒に消そうぜ」
「はい」

灯すロウソクの数が増えていきますように

願いをこめてそっと二人で息を合わせた。

 

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