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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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ヒロさんの誕生日

ヒロさんの誕生日はわからないのですが、ヒロさん乙女座説を採用して、勝手に誕生日を9月前半に想定しました。
ヒロさんのお誕生日のお話です。


2014.9.1     pixiv 投稿



随分と空が高くなった。

秋がもうすぐやってくる。

病院からの帰り道、自転車に乗っていても、頬にあたる風が気持ちいい日が増えてきた。
しかし、季節の変わり目ということは、病気になる人も増えるわけで、俺はまた、休みが減っていた。

早く帰って、ゆっくり休みたい。


マンションに着くと、エントランスから走って出てくる人がいた。
「ヒロさん!」
思わず声をかける。
「えっ!?あ、おかえり野分。悪ぃ遅刻しそうだから、ゴホッゴホ」
振り向いてそれだけ言うと、ヒロさんは走っていってしまった。

ヒロさんに会えた。

それだけで、少し元気になっている自分の単純さに、思わず笑いながらマンションの部屋に向かった。

洗面所で服を脱ぎながら、ふと思い出した。
ヒロさん、咳してた?

浴室に入り、シャワーのコックをひねった。熱いお湯を強めに浴びる。
ガシガシとシャンプーをしながら、考えた。
ヒロさんをちゃんと見たのは、いつだったんだろう。
ここんところ、寝ている顔を見る程度で、声も聞いてなかった。
今日は、ヒロさんをよく見よう。
顔も、顔以外のとこも、全部。
シャンプーした頭を勢いよく振った。


ピンポーン

チャイムの音で目が覚めた。
風呂から上がってそのまま寝てしまっていたらしい。
ソファから起き上がり、玄関に向かう。
ドアを開けると意外な人が立っていた。
「宮城教授、、。何か?」
「悪いんだけど、下の車の中で上條寝てるから。運ぶの手伝って。」
慌てて車に向かうと、後部座席で横になっているヒロさんがいた。

[newpage]

「どうもありがとうございました。」
「風邪だと思うんだけど。あ、いや、俺より草間君の方がわかるか。お医者さんだもんな。とにかく、頼むわ。」
もう一度お礼を言うと、宮城教授は手を振って帰って行った。


「ヒロさん、、。」
ベッドで寝ているヒロさんの額に手を当てた。
熱い。
耳の後ろから首筋に指を当てて、腫れていないか確認した。
咳してたな。
聴診器は病院にしかないから、胸の音は聞けないか。
少し息も苦しそうだ。
冷凍庫からアイスノンを持ってきて、頭の下に置いた。
ヒロさんが、具合悪いのにも気がつかないなんて、、。
俺はなにしてるんだろう。
「ヒロさん」
額にかかる茶色い髪をそっと触る。
顔も熱があるのか、頬は少し赤くなっているけれど、全体的に青白く、もともとの色の白さもあって、なんだか透けるようだ。
薄くて脆い硝子細工のようだ。
俺はそうっと頬を撫でた。

気がついたらヒロさんの横でベッドにうつ伏せになって自分も寝てしまっていた。
時計を見る。
もうこんな時間か。

ヒロさんの顔を覗きこんだ。
額に手を乗せる。
「ん、、野分?」
目を覚ましたヒロさんと、目が合った。
「ヒロさん、具合どうですか?」
起き上がろうとしたヒロさんをとめる。
「起きなくてもいいです。もう少し寝てて下さい。」
「悪ぃ。寝たら少しよくなったみたいだ。」
「まだ、休んでたほうがいいですよ。」
そう言うとヒロさんはおとなしく枕に頭を埋めた。
「何か食べたいものとか、飲みたいもの、ありますか?」
「特に、ない。」
「じゃあ、もう少し寝てて下さいね。俺、ここにいますから。」
「うん。」
少し熱も下がっているみたいで、ホッとした。
「ヒロさん。」
「ん?」
「あんまり、無理しないで下さいね。」
「悪い、、。」
「俺も、もっとヒロさんの様子を見てあげれるならいいんですけど、、、すみません。」
「アホか。お前のせいじゃねえよ。」
「でも、、。」
「ガキじゃねえんだから、自分の体調くらい、自分で管理するべきなんだよ。俺が悪かっただけだ。お前は関係ないだろ。」
関係ない。
そうか、関係ない、のか。
「野分、、どうした?」
「いや、あ、あの、もうすぐヒロさんの誕生日ですね。何か欲しいものはありますか?」
俺は少し落ちこんだ顔を見られないように、下を向いたまま聞いた。
「別に、、、何もいらねーよ。」
なんだろう。ものすごく、さみしくなってきた。
ヒロさんは、俺なんていなくても平気なのかな、、。
俺からのプレゼントなんて、いらないのかな。
「そうですか、、。」
カーテンを閉めた寝室は薄暗く、時計の秒針の音さえ急に大きく聞こえてきた。
俺の顔を見ていたヒロさんが言った。
「野分、。」
「なんですか?」
「お前、前に言ったよな。俺といるだけで、毎日プレゼントもらってるよーなもんだって。」
「はい。」
そう。それは俺の誕生日に俺がヒロさんに言った言葉。
「俺も、そうだよ。」
「え?」
「俺も、お前がいれば、プレゼントなんて、別にいらねーから。」
ヒロさんは早口でそう言うと、布団を頭から被って向こうをむいてしまった。
ヒロさん、それって、それって。
「ヒロさんっ!!!」
俺は布団の上から抱きついた。
「な、何してんだよ!重い、、。」
布団の中から、声がする。
「ヒロさん、好き。好きです。大好きです。」
俺は布団のかたまりを抱きしめたまま、言った。
「重い、、苦しい、、、野分、、。」
慌てて布団をめくると、真っ赤になったヒロさんが肩で息をしていた。
「お前、、マジ死ぬかと、、思った、、。」
「すみません。でも、ヒロさんがあんまり可愛いから。俺、、。」
「アホ!」
「アホじゃないです。バカなだけです。」
真っ赤になっているヒロさんの顔は熱のせいだけじゃなくて、俺のことを想ってくれているから。
そう思うだけで、俺はこんなにも嬉しい。
いつまでも、こうして二人でいたい。
来年の誕生日も、その次の誕生日も、ずっと、ずっと、。


ヒロさん、お誕生日おめでとう。

 

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