frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
井坂さんと上條さん
井坂さんからみた、ヒロさん。
2014.7.28 投稿
「、、、どうも。」
久しぶりに寄った実家からの帰り道で、井坂さんに会って、、しまった。
「よかったら送るぞ。乗ってけー。」
「いや、いいです。」
「遠慮すんなってー、ほらほら。」
なぜか車に乗せられてしまった。
助手席にいるのは、、朝比奈さんか?
「ひっさしぶりだなー。元気にしてんのか?」
「はい。おかげさまで。」
俺は好き嫌いないように育てられているが、どうしても、苦手な人はいる。
井坂さんは家が近所ということで子どもの頃から知っているが、年も離れているし、正直そんなに仲が良い訳ではない。
「お前、あいかわらず秋彦とは仲良くしてんのか?」
そう、こういうところが、苦手なところで。
「はい。たまに会いますよ。」
「そっか。まあ、お前も、幸せみたいだし、良かったわ。」
は?何を言い出したこの人は。
「井坂さん、、、それは一体なんのことでしょうか?」
「いや、何って、そりゃあ、お前が恋人とラブラブみたいだから?」
なぜ?
なぜ井坂さんが??
そんなこと話したことないのに。
「なんのことか、さっぱりわかりませんが、、」
「なーに言ってんだよーいまさら。純愛エゴイスト、モデルお前だろ〜?」
あの、ピンクの、あのパッションピンクのウハウハの、あの本のせいかっ!!
そういえば、この人、、例の本を出版してる丸川の社長だった、、、。
いや、落ち着け自分。
「何ですかそれ?俺、そんな本、知りませんよ。ははは。」
「お前は、変わんねーなー。」
「なにがですか?」
「すーぐ顔に出るとこ。今だって顔、真っ赤だぞ。」
「、、、、。」
黙って下を向いていると
「そーいうところが可愛いよな。大学の先生とは思えないわ。」
「、、、あの、もう、ここでけっこうです。降ろして下さい。」
もう自宅そばまで来ていたから、止めてもらい、車から降りて歩き始めた。
肩をいからせて歩いて行く弘樹の後ろ姿を車の中から見送りながら、笑いがこみ上げてきた。
「あいつ、ほんとに、くっくっく」
「あまりその様な態度を取られないほうがよろしいかと思いますよ。」
助手席の朝比奈が冷たい声で言ってきた。
「なんで?別にいーんじゃねーの。ご近所さんだしさあ。」
「例え昔からよく知っているにしても、上條さんはM大の助教授ですし、宇佐見先生とはそれこそ小説の下読みを頼まれるほどの仲ですよ。わざと怒らせるようなことはしない方がよろしいかと思いますが。」
そんなことは言われなくてもわかってる。あいつと秋彦の仲の良さも言われなくても知っている。
『弘樹は秋彦のことが好きなんだな。』
あいつらが中学生の時には、もう俺は気づいていた。弘樹が秋彦を好きなことに。そして、頭がいいクセに、鈍いのか、秋彦は全くそのことに気がついていないことにも。
それに気づいてからは、あの二人を目にする度に、胸の奥が痛んだ。
それは、当時の自分に、似ていたから。
子どもの頃から物語を書いていた秋彦に、面白いから書くように、勧めたのは弘樹だったという。
「俺が面白いと思ったんなら、面白い。」と小学生のガキのくせして言い切った弘樹は、ずっと秋彦の作品を読み続けている。
誰よりも一番近くにいて、誰よりも理解しているのに、肝心の想いは伝わらない、か。
その頃、たまに見る弘樹の顔は、俺ですら、からかうことができなかった。
お前、どうする気だよ。
弘樹を見て、何度思っただろう。
助手席に座る朝比奈の顔を見た。
子どもの頃から兄弟のように仲がいいというのは、難しい。
俺と朝比奈さえ、お互いの気持ちが通じるまでには、時間がかかった。
弘樹はどうやって、吹っ切ったんだろうか、それとも、まだ、少しは気持ちが残っているのか。
そんなことを思っていたが、もう大丈夫なんだろう。
二人の友情は続き、秋彦は弘樹の話で小説を書き、丸川は儲かる、と。
よかった、よかった。
「龍一郎様、どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。」
俺は本当に欲しいものは、手に入れた。
お前も、きっと手に入れたんだな。
俺は車のシートに体を沈めた。
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