frown
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夢のような
11月26日は「いい風呂の日」ということで、書きました。なんとか間に合った、、。
2014.11.26投稿
夢でも見てるのかと思った。
久しぶりに日にちが変わる前に帰宅できたけれど、そんな日に限ってヒロさんはいなくて。
玄関のドアを開けたとき、ひんやりとした空気だけが俺を迎えた。
「ただいまです。」
いつものように言う挨拶も虚しく響く。
小さなため息をつきながらスニーカーを脱いだ。
真っ直ぐに洗面所へと向かう。
持ち帰った着替えを出したり、手を洗ったりしながら、ふと思った。
この寂しさを俺は毎日ヒロさんに味あわせているんだと。
真っ暗な家に帰ってきても、部屋の中でヒロさんが寝ていたら、空気が違う。
俺が今、胸に穴があいているように寒いのは、誰もいないからだ。
ヒロさん、いつもごめんなさい。
心の中で謝る。
ぼんやりとそんなことを考えていたらぶるっと震えた。
寒いし、とりあえずお風呂に入ろう。
いつもは、烏の行水な俺だけど、今夜は入浴剤も選んで、ゆっくりと入ることにした。
肩までお湯に浸かる。
身体の芯まで温かさが染み込んでくる。
それにしてもヒロさん遅いな。
いくらゼミの飲み会って言っても、心配は尽きない。
宮城教授も一緒だし。
なんだか色んなことを考え出した自分をリセットすべく、勢いよく浴槽から出ると髪の毛をガシガシと洗った。
自分から病院の匂いと、疲れが流れ落ちていくのが感じられる。
ふうっ、と息を吐いて目の前の鏡を見ていると、カタンと物音がした。
振り返ると、浴室のドアが開いた。
「あ〜、野分〜〜〜ここにいたぁ。」
赤い顔をしたヒロさんが笑っている。
「ヒロさん、」
話しかけようとしたら、また、ドアが閉まった。
酔ってる。
かなり、酔っぱらっている。
早く上がって介抱してあげないと。
そう思っていると、またドアが開いた。
裸のヒロさんが立っていた。
ヒロさんが、自分から、俺の入っているお風呂に入ってくるなんて。
「ヒロさん?」
ニコニコしながらイスに座っている俺の膝に向かい合わせに座ってきた。
「野分〜」
どれだけ飲んだんだろうか、、。
ヒロさんから煙草の匂いがする。
「ヒロさん、頭洗ってあげます。」
思わずそう言うと、おとなしく頭を下げてきた。
可愛い。
こんなに素直なヒロさんは、めったにないから、俺は嬉しくなって丁寧に髪の毛を洗い始めた。
「気持ちいいですか?」
頭をしゃこしゃこと洗いながら聞くと、下を向いたままコクンと頷いた。
洗い終わってシャワーで泡を流す。
ぎゅっと目を瞑っている姿にドキドキしてくる。
シャワーを止めると、ヒロさんの頬に手を添えた。
俺の方を見上げるヒロさんの瞳が揺れている。
「ヒロさん。」
俺はヒロさんへと唇を寄せていった、、、、
ぼちゃんっ!!
水面に顔が沈みかけて、目が覚めた。
驚いて顔を上げる。
どうやら俺は浴槽の縁に頭を乗せて眠っていたらしい。
ヒロさん?
周りを見回しても誰もいない。
、、、夢か。
一人で浴槽の中でため息をついた。
せめて、キスしてから目が覚めたら良かったのに。
そう思ってため息をつくと、浴室のドアが開いた。
「野分、、大丈夫か?」
心配そうな顔のヒロさんがいる。
「ヒロさん!」
思わず声を上げると、うるさいと言うように眉を顰められた。
「お前、風呂で寝ると危ないぞ。早く上がれよ。」
ほんの少しだけ赤い顔のヒロさんに向かって思わず言う。
「ヒロさん、一緒にお風呂に」
「アホか!!」
ドアが閉まった。
やっぱり、あんなヒロさんは夢の中だけだ。
わかっているのに思わず苦笑した。
軽く首を回して天井を見上げると、また瞼が重くなってきた。
眠い。
浴室のドアが開いた。
腰にタオルを巻いただけのヒロさんが立っていた。
「ヒロさん?!」
「お前、、、また寝てしまいそうだから、、寝ないように見ててやる。」
夢でも見てるのかと思った。
「じゃあ、俺が洗ってあげま」
「アホかっ!」
手桶で殴られた、、。
「ヒロさん、、これは痛いです、。」
「うるせぇっ、お前は何もするなよ。わかったな。」
殴られた頭が痛む。
夢じゃなかった喜びを噛みしめながら、俺はヒロさんに手を伸ばした。
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