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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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純愛

宇佐見さんと、ヒロさんと、井坂さんのお話です。

2014.9.20     pixiv投稿


「秋彦、暇つぶしに大学に来るなって言ったよな?」
眼鏡をかけた弘樹が俺の後ろから文句を言ってくる。
窓の外の楽しそうに歩いている学生たちの様子を見ながら、
「弘樹、コーヒーが飲みたい。」
そう言うと、ドサッと本を置く音がした。
「なんなんだよお前は。コーヒーくらい自分で淹れろよっ!!」
全く、こいつは変わらない。
昔からそうだった。
今だって文句を言いながら自分の分と俺の分のコーヒーをマグカップに作っている。
「ほらよ。」
乱暴に俺の横に置かれたマグカップのコーヒーは、俺の好きな濃さだった。
一緒にコーヒーを飲みながら、研究室の本棚を眺める。
「お前、今晩、暇か?」
「ああ、特に予定はない。」
なんとなく、さみしそうな顔をした。
またか。
「じゃあ、ウチに飲みに来いよ。」
「あー、いいな。でも、お前のとこ、同居人いるだろ、いいのか?」
「ああ、今日はいないから。じゃあ後でな。」
立ち上がり、マグカップを渡した。
「それと、この本、借りてっていいか?」
本棚の本を一冊抜いて、見せる。
「それならいいぞ。じゃあ、夜行くわ。」
そのとき研究室のドアがあいた。
「上條〜、あの巻き物、、あ、失礼。来客中でしたか。」
入ってきた人と入れ違いにドアへと向かった。
「じゃあ、待ってるからな。」
「はいはい。邪魔だから、さっさと帰れよ!」
「コーヒー、ごちそうさま。」
そう言うと俺は研究室を後にした。
[newpage]

「おじゃまします、、って、秋彦、仕事は終わったんだろうな?」
こいつは来た早々にそんなことを言う。
「なんとかな。」
「本当だろうな?お前はいつも、、」
心配してるのは分かるけれどな。
「ワインでよかったか?」
弘樹の顔がパッと明るくなる。
「マジか?お前が出すワイン、いっつもうまいからなー。飲む飲む。」
そう言うと、ソファに座った。
ワイングラスを出して注ぐと一口飲んで、ふわっと笑う。
飲んだときくらいだな、弘樹が笑うのも。
俺は自分のグラスにもワインを注いだ。
俺だって、少しはお前の心配をしてるんだぞ。

「それでな〜、野分が言うんだよ、、、おいっ!聞いてるのか、秋彦〜。」
酔うと、弘樹は草間君の話を延々とし始める。
自分では、気づいていないようだけれど、好きな気持ちを全身から出して話し続ける。
こいつのこんな姿を酒の肴にするのは、悪くない。

ピンポーン。

思わず時計を見る。こんな時間に誰だ?
立ち上がろうとしたら、玄関が開く音がした。
「秋彦〜、ちゃんと仕事してるか〜?」
「井坂さん、、。何しに来たんですか?」
なんでこの人はこんな時間に来たんだ?しかも、少し酔ってるのか?顔がほんのり赤いし、目もなんだか妖しく光っている。
「冷たいなぁ〜。あれ?弘樹じゃん。久しぶり〜。」
「、、、どーも。」
弘樹は酔ってフニャフニャとソファに凭れかかりながら、挨拶をしている。
井坂さんはその横にドサリと座った。
「お前が秋彦の家に来るなんて、珍しいなー。」
井坂さんは悪戯っぽく笑う。
「あー、そーですねー。」
弘樹はワインを飲みながら答えた。
「いつもは、ウチに秋彦が来ますからね〜。」
「えー、何、そーなのか?お前、弘樹の家に行ったりするのか?秋彦?」
また、何か面倒なスイッチが入ったのか、井坂さんが楽しそうに弘樹と俺の顔を見ている。
「そりゃあ、家にだって行きますよ。幼馴染なんですから。井坂さんと、朝比奈さんみたいなものでしょう。」
俺がそう答えると、井坂さんの目はさらに楽しそうに細くなった。
「それを言うなら、俺と春彦だろ?秋彦。」
考えたこともなかった。
あの人と井坂さんの関係は俺が思うよりも、俺たちの関係に似ているのか?
まあ、あの人のことは、考える必要もないか。
「お前と弘樹の関係を、俺と朝比奈と同じって言うと、チビたんが怒るぞ、秋彦。」
そう言って、井坂さんはケラケラと笑っている。
確かにそうか。

ピンポーン

また、インターフォンが鳴り、俺は席を立った。

今日は、客が多いな。
まあ、誰が来たのか予想はついていた。

[newpage]
あれ?秋彦がいない。
少しぼんやりしている間にリビングには、俺と井坂さんしかいなかった。
井坂さんとは、家が近所だから、子どもの頃から知ってはいるけれど、、年も離れているし、あんまり仲良くしていた記憶はない。
なんだか、俺は会うたびに笑われていたような気がするし。
今も、ニヤニヤしながら俺の顔を見ている。
「なんなんですか〜。」
「んー、弘樹はあいかわらず可愛いなぁ〜。」
俺は飲んでいたワインを吐き出しそうになって、激しくむせた。
「びっくりさせないで下さいよぉ。」
やっと、咳が止まって涙目になりながら顔を上げると、思った以上に近いところに井坂さんの顔がある。
今まで、井坂さんをこんなに近くで見たことはなかったかもしれない。
アルコールの回った頭でも、分かるくらい、この人の顔の方がよっぽど綺麗だ。
真っ黒な髪の毛は艶があり光っている。野分の髪の毛も真っ黒だけど、あいつはどちらかというと光を吸いこむような黒だ。目の前にある、男にしては綺麗すぎる髪の毛が、不思議になって、俺は思わず手を伸ばして少しはねている毛先を触った。
「ん、どーした?何かついてたか?」
井坂さんが不思議そうな顔で俺の伸ばした手のほうを見た。
「なんかー、きれーな髪ですねー。」
俺はそう言うと、指先に髪の毛をくるっと巻きつけた。
「お前の髪のほうが綺麗だよ。サラサラしてて、柔らかくて、、、。」
そう言うと井坂さんは俺の髪の毛に手を伸ばして撫でてきた。
お互いに向かい合って、手を伸ばして髪の毛を触っていたら、なんだか可笑しくなってきて、俺は思わず笑った。
「弘樹、、お前さぁ、本当に、分かってないなぁ。自分のこと。」
そう言うとニヤリと笑って、そのまま俺の後頭部に手を回してきた。
「ん〜、なにがですか〜?」
あれ?井坂さんの顔、さっきより近くなってる。
真っ黒だけど、きらきらしてる瞳は、俺がいつも見てる飲み込まれそうな真っ黒な瞳とは違う。
唇も違う。
え?
気がついたら、目の前にほんのりと紅い唇があった。
何でこんなに近くに?
驚いていると、今度はあっという間に離れていった。
なんだったんだ?今のは。
顔を上げると、井坂さんは俺の前に立っている人に、引っ張りあげられてた。
まるで猫の子のように、首根っこを掴まれて。
「龍一郎様。帰りますよ。」
あー、確かこの人は、、。
「朝比奈さん、早くその人を連れて帰って下さい。」
秋彦が、腕を組んでリビングのドアのところから声をかけている。
ああ、そうだ。朝比奈さんだ。
朝比奈さんに引きずられるようにして、井坂さんはいなくなった。
溜息をつきながら、秋彦が玄関から戻ってきた。
「全く、井坂さんも井坂さんだが、お前もお前だ。弘樹。」
「ん〜?何が?」
「草間君も、、気の毒に。」
なんだー、秋彦。もっと聞きたかったのかー。
「野分のことか〜。聞いてくれよ、秋彦〜。」
俺はまた、秋彦に話し始めた。
「弘樹、ちょっと待て。今、メモをとるから。」
メモ?なんだそりゃ、まあ、いっか。
「あいつがな〜、いつも言うんだって、、」

なんだか、秋彦の顔がいつもより優しいのは、気のせいなんだろうか?

俺はとりとめもなく、話し、そしてなんだか気持ちが軽くなって、家に帰った。
 「ありがとな、うまかったよー。」
「いや、こちらこそ、ごちそうさま。」
なんのことだ?
俺は、とくに何もごちそうなんてしてないんだけど、、、?
まあ、いいか。
「またなー、秋彦。」

 


『純愛エゴイスト』の新刊が並ぶまで、あと、何日?

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