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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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聖なる夜 2

聖なる夜 1 の 続きです



「秋彦、おい、聞いてんのか?」
M大学の国文学部の研究室の昼下がり。
この部屋の主である上條弘樹が声を荒げているにも関わらず、M大学にも国文学部にも全く関係ない秋彦は、まるで自分の部屋のように寛いだ様子で肘をついて窓の外を眺めていた。
「弘樹、コーヒーはまだなのか?」
「何度も言わせんなよ。暇つぶしにここに来るんじゃねえ。俺は忙しいんだっ!」
そう言いながらも二人分のコーヒーを淹れ始めた弘樹は、秋彦の様子がいつもと少し違うのが気になっていた。
もうすぐ12月24日。
弘樹にとって、世間一般のイベントは、もはや諦めるのが習慣になっているけれど、それでも気分が落ち着かなくなるのは確かだった。
秋彦の視線の先には、学生たちがクリスマスの準備をする姿が見えた。

ここ何年かはクリスマス前になるとなんだか嬉しそうな様子で弘樹の研究室に来ては弘樹と野分のことを冷やかしていた秋彦が、今日はまた昔と同じ、イベントなんて興味ないという様に振舞っているのが感じられ、弘樹は小さなため息をついた。
病院で見たときの様子だと、秋彦の同居人はタカヒロの家族とクリスマスを過ごすはめになっているんじゃないかと思っていたところだった。
今の秋彦の様子だと、その心配はどうやら当たってしまったようだった。

「秋彦、仕事のほうは大丈夫なのか?」
弘樹はコーヒーを渡しながら秋彦に尋ねた。
「ん?ああ、それもあるにはあるが、どうでもいいんでな。」
「いいかげん、まともに仕事に向き合えよ、、」
あいかわらずの返答に弘樹もまたいつものように返す。
「お前が仕事を優先しすぎなんだよ、弘樹。」
秋彦の言葉に、コーヒーを口に運びかけた弘樹の手が止まった。
マグカップを叩きつけるように机に置くと、秋彦に向かって言った。
「お前、何言ってんだ?仕事を優先するのは、当然だろう?」
コーヒーを啜りながら秋彦は眼鏡の奥から弘樹をじっと見つめた。
「仕事がお前を幸せにするのか?弘樹。」
弘樹も負けじと言い返した。
「そーだよ。俺は日本文学を極めたいんだ。だからこの仕事に就くことができて、好きな研究がやれるんだから、幸せだよ。それを大切にすることの何が悪いってんだ?」
「別に悪いとは言ってない。しかしな、仕事より、大切なものだってあるだろう。」
秋彦の瞳に映る弘樹は昔から変わらない。こいつは自分の気持ちよりもプライドを優先させる。楽なほうへ流されることを自分自身が許さない。
そこがいいところでもあるんだが。
「なんだよ秋彦。お前まさか、仕事より恋人をとる、とか言うタイプじゃないだろうな?」
眉間のシワをいつもの倍くらい深くしながら聞いてきた弘樹の顔を見ながら秋彦は煙草に火をつけた。
「分かってないな、弘樹。」
「何がだよ。」
「仕事と、恋人は、比べるものじゃないって言ってるんだ。そんなことも知らないのかお前。大学で何を教えているんだ?」
「お、俺は、ここで、色恋を教えてるわけじゃねーんだよっ!」
真っ赤になって立ち上がった弘樹の顔を見ながら秋彦は煙草の煙を吐く。
こいつは頭はいいのに、なんというのか、、。
「意地をはってないで、もう少し自分の気持ちをちゃんと表したほうがいいと思うがな。」
「うるせえ、余計なお世話だ。」
弘樹は赤くなった顔をぷいと逸らすと机の上のコーヒーに手を伸ばした。
その時、研究室のドアが勢いよく開いた。
「上條〜、助けてくれ〜。」
スーツを着た男がバタバタと入ってきたと思ったら、弘樹の肩に後ろから抱きついた。
「ちょっと、、教授!やめてください。」
「上條はどうせクリスマスは彼氏とラブラブなんだろ〜。だったら少しくらい俺を癒せ〜。」
弘樹は首にぐりぐりと頭を押しつけられている。
「何言ってるんですか、俺にはクリスマスなんてありませんよ。それもこれも、全部教授の仕事のせいでしょうが。」
「俺がクリスマスに仕事なら、上條も仕事するのは当然だろ?」
「それは一体全体どーゆー理屈なんですかっ!」
突然目の前で起きた騒動に唖然としている秋彦の視線が、弘樹の肩越しにこっちを見た男と合った。
「、、上條、こちらはどちら様?」
「、、弘樹、こちらは?」
二人に同時に聞かれた弘樹はげんなりとした低い声で言った。
「教授、紹介しますから、早く離れて下さい。」
弘樹に抱きついていた男は、乱暴に腕をふりほどいた弘樹の態度もどこ吹く風と流して、にっこりと秋彦に笑いかけると、弘樹の紹介を待たずに自己紹介をしてきた。
「どーも。国文学部の教授をしてます宮城と言います。」
秋彦もよそゆきの笑顔で返す。
「初めまして。宇佐見秋彦と言います。弘樹がいつもお世話になってます。」
「秋彦、てめぇ、ワケの分からん挨拶するんじゃねー。」
文句を言っている弘樹を横目に、煙草に火をつけながら宮城が秋彦に尋ねた。
「あー、あの有名な宇佐見秋彦さんでしたか。どうりで見たことがあると思ったはずだ。で、失礼ですけど、上條とはどのようなご関係で?」
「教授、そんなことどうでもいいでしょう。」
噛みつくようにそう言うと、弘樹は宮城の前に乱暴に灰皿を置いた。
「なんだよ上條。別に俺が宇佐見さんと話したって構わないだろ?」
「それじゃあ一応聞きますけど、何しにここへ来たんですか?」
そう言う弘樹の眉間にできたシワをグイグイと宮城が押している。
「ん?何って、だからお前に癒してもらいに。」
宮城の手をベシンと払いのけると弘樹は研究室のドアを開けた。
「では教授。俺は今、見ての通り来客中ですので、どうぞおかえりください。」
「んだよ、上條は冷たいなあ。俺とお前の仲じゃないかよ。」
そう言いながら宮城は廊下へ出るドアを押さえている弘樹に抱きついた。
「やめてください。」
顔を引きつらせながら言う弘樹の声に重なるように冷たい声が廊下から聞こえてきた。
「、、、宮城、、。」
ドアの向こうには仏頂面の若い男の子が立っていた。
「し、忍?!」
宮城が慌てて弘樹から離れた。忍はズカズカと近づくと、宮城のネクタイを力任せに引っ張った。
「宮城、、てめえはコイツと一体どんな仲だって言うんだよ!」
そう宮城を睨みつけた後、ドアを押さえている弘樹をジロリと見る。
弘樹は困った顔で宮城を見た。
「苦しい、、忍。いや、、なんでもないって、、今のは単なる言葉のあやだ。」
襟首を締め上げられながら、宮城は必死に言い訳を始めた。
「言葉のあや?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ。いつもいつもここに来るたびにコイツに抱きついてんじゃねぇかよ。」
「いや、本当に上條とはなんでもないんだって、、」
忍は舌打ちをすると、宮城のネクタイから手を離した。
足早に廊下を歩き出した忍の後ろを宮城が慌てて追いかけて行った。
廊下に響く二つの足音はやがて小さくなっていった。
弘樹は肩を落としながら静かにドアを閉め、研究室の中の秋彦を見て、ため息混じりに謝る。
「悪りいな。バタバタして。」
「いや、滅多に見られないような、面白いものを見せてもらった。ありがとう。」
そう言って秋彦は涼しい顔でコーヒーを啜っている。
「面白くなんかねーよ。ったく、あの人にも困ったもんだ。」
そう言うと弘樹は自分の机でコーヒーを飲みながら仕事を始めた。
その横顔を見ながら秋彦が話しかけた。
「そうだ弘樹。さっきの話だと、24日の夜はヒマなのか?」
「ああ。俺はその日は仕事が終われば何もねえから、夜は空いてる。」
パソコンの画面から目を離さずに弘樹は淡々と答える。
「ちょうど読んでもらいたい原稿があるんだ。俺もその日はヒマだし、大学が終わったらうちに来てくれないか。」
弘樹は顔を秋彦の方へ向けた。
「それはかまわないけど。」
弘樹の言葉に秋彦は笑いながら言った。
「お前の好きな酒を用意しておいてやるよ。」
「ほんとか?んじゃ仕事が終わったら行くわ。」
「そうしてくれ。」
マグカップを手に秋彦が立ち上がった。
「さてと、俺もそろそろ帰るとするか。」
「おう。帰れ帰れ!お前もちゃんと仕事しやがれ。」
笑いながら秋彦が出て行くと、研究室は、キーボードを叩く音だけが響いた。
やっぱりあいつ、24日、一人だったんだな。
弘樹はしばし論文を書く手を止めた。

家族水入らず、か。

タカヒロの言葉を思い出す。
秋彦にとっては、きっと理解できない言葉だろう。
子どもの頃に一度だけ行ったことがある宇佐見家のクリスマスパーティは、大きな本物のツリーがあって、暖炉があって、見たことないようなご馳走と大きなケーキが並んでいた。
まるで外国の絵本の中のようなクリスマス。
だけど、、、。
なんだか、ひどく寒々しかった。
それで、次の年は、俺の家に秋彦を呼んだんだっけ。
俺の家は、並んだご馳走も思いっきり和食で、クリスマスツリーがなかったせいで、庭の松の木がツリーにされていたけれど、それでも秋彦は嬉しそうに笑っていた。
そういえば、二人でプレゼント交換したんだったな。

今年は俺から秋彦に何かクリスマスプレゼントを持っていってやるか。
そこまで考えると、弘樹はまた論文にとりかかった。

窓の外には、楽しそうな学生たちが笑いながら歩いている。

もうすぐ、クリスマス。

弘樹はまた勢いよくパソコンのキーボードを叩き始めた。

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