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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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草間野分が生まれた日

野分の誕生日のお話です。
ヒロさん視点

930は、草間の日!

2014.9.30   pixiv投稿


自宅マンションの寝室で、息を潜めてデジタルの表示をじっと見つめる。
0:00になった瞬間に、メールの送信ボタンを押した。

「誕生日おめでとう」

無事に送信したのを確認して、携帯電話の電源を落とすと枕元に投げた。
今年もまたメールから始まる誕生日。
いずれ返信はくるだろうけれど、野分はいつ帰ってくるか、わからない。
そのまま丸一日顔も見れずに、野分の「今日はすみませんでした。」メールで終わった年もある。

今年はどうなんだ?

俺は膝を抱えると、一つため息をついた。

分かっている。
頭では、分かっているんだ。
だけど、これは頭の問題じゃない。
それも、もう分かっている。
何度も何度も、同じことを味わってきたのに。
誕生日のような特別な日には、さらに強く俺の中に湧き上がり、キリキリと胸を抉ってくるこの気持ちをどうしたらいいんだ?

あいたい。

野分にあいたい。

「あいたい」と思う自分の気持ちを整理したら、この胸の痛みは治まるのだろうか?
冷静になれば、もしかして。
俺は本棚から、辞書を引っ張り出した。
俺は辞書が好きだ。
それに、誰かに相談するなんて、とてもじゃないけどできやしないから。
まるで子どもの頃に戻ったように、ページをめくった。


「あう」
①二つ以上のものが、一つに集まる。まじって一つになる。
②二つの物が、すき間なくぴったりと合致すること。


もっとたくさんの意味があったけれど、俺は辞書を閉じた。

辞書はなんでも知っている。


熱い息が零れた。

野分、早く帰ってこい。


野分の少し高くて甘い声が聞きたい。
野分の大きくて温かい手に触れたい。
そして
そして
二人の身体が交じり合い一つになるような、甘くて深いキスがしたい。
俺の身体の奥深くまで、すき間なく、野分で、野分自身で埋めて欲しい。

あいたい。

一緒に住んでいるのに、こんなにも野分の不在が応えるなんて、俺は本当にダメになってしまったんじゃないのか。
あいつがアメリカに行っていた一年間、一体どうやって生きていたのか、今ではもう、自分でも想像が出来ない。

「野分」


声に出して名前を呼んでみたら、なんだかそこにいるような気がしてきて。


「野分、、野分、、野分。」

 

俺は何度も名前を呼んでみた。

野分は本当の誕生日を知らないと言っていた。
拾われた日が誕生日になったから、それは生まれた日ではないと。
でも、例え本当の誕生日じゃなくても、今日はお前が「草間野分」になった日なんだろう?

だったら、今日が野分の誕生日だ。


「野分」


声に出して呼んだ名前は、俺の耳を刺激して、また、胸が痛くなった。
お前の名前を、俺がどれくらい好きかなんて、絶対言わねーけど。


「野分」

 


ガチャ
寝室のドアが開いた。
真っ暗な部屋にリビングからの光が差し込んでくる。
「ただいまです。ヒロさん、呼びましたか?」
「野分」
俺はまた、名前を呼んだ。
「はい。なんですか?」
野分がベッドの上に座っている俺の横に来た。
俺は野分に腕を伸ばすと、その首に腕を回した。
「、、ヒロ、、さん?」
温かい。本物だ。
夢じゃない。
野分だ。
「野分、、誕生日おめでとう。」
俺は顔を見られないように野分の肩口に顎を乗せて、耳元でそっと囁いた。
「ありがとうございます。」
そう言うと野分は俺の身体を強く抱きしめた。
さっきまでの胸の痛みが嘘のように、穏やかな気持ちが広がっていく。
野分の温かさは、いつでも俺を包んでくれる。
ありがとうを言うのは、俺のほうだ。
野分。
生まれてきてくれて、ありがとう。

お前にあえてよかった。
 

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