frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
馬鹿みたいな恋
秋彦と弘樹の「ただならぬ仲」になる前の思春期の時期。
弘樹視点です。
まいごのあかねさんより、ボカロの「曖昧劣情lover」をイメージとして頂きましたので、歌詞の一部をタイトルと本文に使わせてもらっています。
あかねさんへ、いつも素敵な切り絵ありがとうございます。
お礼の「うさヒロ」になったかな?
2014.10.1 pixiv投稿
どこで間違ってしまったんだろう。
出口のみえないこの迷宮から、俺はいつ出られるんだろう。
「弘樹、俺、彼女ができた。」
放課後、いつものように二人で歩いている時に、突然秋彦がそう言った。
「もしかして、昨日の子?」
俺は秋彦のほうを見もしないで、歩きながら聞いた。
「なんだ。もう知ってたのか?」
俺が知らないわけねーだろ。
秋彦とは、こいつがイギリスから帰国してきた10歳の頃からのつきあいだ。
そんなガキの頃から、こいつは女にモテていた。
単に誰ともつきあってなかっただけで、中学生になってからは、それこそ次から次へと、日替わりのように女の子が告白しに来ていた。
俺は、秋彦に告白しに来た子は全員知っている。
昨日の子は、学年で一番可愛いと男子に評判の子だった。
ここのところ、いつも俺たちの方をじっと見ていたから、俺は多分そんなとこだろうと思っていた。
「お前がOKするなんて、思わなかったけどな。」
そう言うと
「まあ、一度くらい、つきあってみようかと思ってな。」
なんだか、暗い声でそう言った。
「あんな可愛い彼女が出来て、お前、嬉しくねーの?」
「よくわからない。」
よくわからないのは、俺のほうだ。
「彼女と帰らなくていいのか?」
そう聞いたら不思議そうな顔で言った。
「なんでだ?俺は弘樹と帰りたい。」
だから、やめてくれ。
そんなことを言わないでくれ。
お前が、彼女と仲良くしてくれたなら、俺だって、もっと楽になれるのに。
「秋彦、、それ、彼女に言うなよ。」
「なんでだ?」
コイツは、全く分かってない。
俺のイヤな予感は当たった。
何ヶ月もしないうちに、秋彦は彼女と別れていた。
「やっぱり弘樹といたほうがいいな。」
二人で俺の部屋にいる時にポツリと言った。
俺は読んでいた本から顔を上げて、秋彦の顔を見た。
いつもと同じ。俺の机の上でノートを広げてペンを走らせている。
その横顔を見ている俺の本当の気持ちも知らずに、お前は簡単にそんなことを言う。
だったら、ずっと、俺といろ。
このままずっと。どこへもいくな。
俺はいつだって、そう願っていた。
初めて会った10歳の頃からずっと。
秋彦はそれっきり、彼女を作ることはなかった。
だから俺はほんの少し期待していた。
ひょっとして
俺といることを選んだのかと。
お前はいつも優しく笑うから。
それなのに
「好きな男ができた」
その言葉が俺を突き刺した。
どうして男なんだ。
どうして俺じゃないんだ。
せめて女だったら。
俺の長い恋心はもう限界まで渇いていた。
秋彦は知らない。
あいつが大好きな「タカヒロ」に会っている時、俺が名前も知らない男に会っていることを。
秋彦は知らない。
「ここが一番落ち着くんだ。」
その言葉を俺がどれほど欲しているのかを。
秋彦は知らない。
俺のベッドで眠っているお前の横で、膝を抱えた俺が唱えている言葉を。
「好きだ 好きなんだ 愛してる。」
お前は何も知らずに優しく笑うから、俺はたまらなくなる。
「好きだ 好きなんだ 愛してる。」
俺の気持ちは、これから先、千回唱えても 何回唱えても、きっとお前には届かないから。
俺は唱えることをやめた。
もう誰にも言うことはない。
それなのに
想うのはいつもお前のことばかりだ。
この気持ちはどうにもできない。
好きだ。
好きなんだ。
愛してる。
この病は終わらない。
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