frown
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夏祭り
- 2014/08/13 (Wed)
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短いですが、夏の日のあさいさ。無口な朝比奈さん視点です。
2014.8.13
龍一郎様が、今日は珍しく夕方に浴室に向かわれた。
シャワーをつかう水音を聞きながら、念のため手帳を確認するが、やはり、
特に予定は入っていない。
暑いせい、か。
そう考えてはみるものの、いまいち腑に落ちない。今日は、そこまで汗をかくようなこともなかった。
何か、大切なことを忘れている。
手帳ではなく、テーブルの上のカレンダーをみると、今日の日にちに丸がつけられていた。
ようやく思い出した。
こんなことではダメだな。
反省しつつも、急いで準備に取りかかった。
「あーさーひーなー!!」
一通り用意が終わった頃、風呂から上がった龍一郎様が呼ぶ声がする。浴室に向かうと、例によって例のごとく、ビショビショの身体を拭きもせずに、立っている。
まったく、水も滴る、とはよくいったものだ。
「ふけ!」
引き締まった身体を惜しげも無く晒してこちらを見る。
何年たっても、このときばかりは私の精神力が試されているような気がする。
少しでも気を緩めるといけないと思うせいか、いつもより、さらに無表情になりながら、私は黙って柔軟剤を効かせたバスタオルを投げつけた。
龍一郎様は顔で受け止めると少し口を尖らせた。
そんな可愛らしい顔はおやめください。
結局、時間も余りないのを思い出したようで黙って拭き始めた。
腰にタオルを巻いた状態でリビングに来たので浴衣を出した。
「今日は、こちらをお召しになりますか?」
「ああ。」
立っている龍一郎様に浴衣を着せる
藍色の生地が黒髪によく映える。
キュッと小気味のいい音を立てて、帯を締め終わる。
お綺麗です。
「朝比奈、お前も着ろよ。」
「わかりました。」
私が浴衣を着ている間、ソファに座り話しかけてくる。
「なあ、チョコバナナあるかなー?久しぶりに食べたい。あ、金魚もすくいたい。それから、」
「龍一郎様、できました。行きましょうか?」
気のせいか、私を見て少し赤い顔をされた。
二人で下駄を履いて歩く。
祭り特有のざわめきが聞こえ始める。
空気もなんだか煌めいている。
「朝比奈ー、あれ食べようぜ。」
「、、、チョコバナナですか?」
「お前も食うか?」
他愛もないやりとりをしながら、夏の夜をこうして二人で歩くことができるなんて。
私は果報者です。
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