frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
カテゴリー「エゴss」の記事一覧
- 2024.11.24
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- 2021.01.03
忍ぶれど④
- 2020.11.23
三連休 夜の部
- 2020.11.23
三連休
- 2020.11.08
台風の日
- 2020.03.05
春の弥生の
- 2019.11.23
走り続けるその先に 後日談
- 2019.11.23
走り続けるその先に
- 2019.03.03
一年に一度の
- 2019.02.23
ニャンニャンニャンの日
- 2019.02.03
春立ちぬ
台風の日
- 2020/11/08 (Sun)
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野分の誕生日のおはなし。
今年は忙しくて書けないかと思ってました。でもやっぱりお祝いしたい、と短いながらもなんとか書けて良かったです。
2020.9.30
今年は忙しくて書けないかと思ってました。でもやっぱりお祝いしたい、と短いながらもなんとか書けて良かったです。
2020.9.30
春の弥生の
- 2020/03/05 (Thu)
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ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
一人で暮らすことにはだいぶ慣れた秋彦だったが、このチャイムが鳴ったら自分が出なければならないことには、まだ慣れずにいた。今まで住んでいた家では来客時には必ず誰かが応対してくれていたから、チャイムは聞こえても体はイマイチ反応しなかったりする。それに誰かも分からないのに、なぜ本を読むのをやめてまでわざわざ立ち上がる必要があるというのだ。
そう思って居留守を決めようとしたが、すぐさまピンポンピンポン、と立て続けにチャイムが鳴り響いた。
「はいはい」
今度は本を閉じて立ち上がる。
こんな鳴らし方をする奴は一人しかいない。
「何の用だ」
「いいから、とっとと開けろ」
予想通りの声にドアを開けると、なにやら桜色の風呂敷に包まれた荷物を抱えている幼馴染みが立っていた。
「どうしたんだそれ」
「ババァがお前と食えって持ってきやがった」
「おばさんが」
向かいに住んでいた幼馴染みの母親は、小さな頃からいつも自分に優しくしてくれる人だった。
「何が入ってるんだ?」
「俺もまだ見てない」
リビングのテーブルの上で風呂敷包みを広げると、中から小ぶりの重箱が出てきた。蓋を開けると下の段にはちらし寿司が、上の段には桜餅と菱餅の形のケーキが詰められていた、
「マジかよ…」
「桃の節句か」
「つか、お前の誕生日だろ」
「お礼を言わないとな」
「あのババァ、俺の誕生日にはケーキの一つもなかったくせに」
「それは弘樹の日頃の行いが悪いんだろ」
「うるせぇよ」
「せっかくだから一緒に食べるか」
「俺はいいけど。お前はいいのかよ」
「一人じゃ食べ切れない」
子どもの頃から、誕生日にはあまりいい思い出はないけれど。
「おい秋彦、ロウソクあるか?」
「ロウソク?」
「誕生日のお祝いだろーが。ロウソクを歳の数だけ立てようぜ」
「煙草ならあるが」
「ケーキに煙草立てられるかよ!」
「細かいことを気にするな。火がついているんだから、ほぼ同じだろう」
「同じじゃねぇ」
真っ赤な顔で必死になっている弘樹を見ていると、なんだか自分の誕生日も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「しかたねぇな。今からロウソク買ってくるか?」
「いや、充分だ」
小さい部屋で過ごす初めての誕生日を春の風がふわりと流れていった。
秋彦、誕生日おめでとう。
一人で暮らすことにはだいぶ慣れた秋彦だったが、このチャイムが鳴ったら自分が出なければならないことには、まだ慣れずにいた。今まで住んでいた家では来客時には必ず誰かが応対してくれていたから、チャイムは聞こえても体はイマイチ反応しなかったりする。それに誰かも分からないのに、なぜ本を読むのをやめてまでわざわざ立ち上がる必要があるというのだ。
そう思って居留守を決めようとしたが、すぐさまピンポンピンポン、と立て続けにチャイムが鳴り響いた。
「はいはい」
今度は本を閉じて立ち上がる。
こんな鳴らし方をする奴は一人しかいない。
「何の用だ」
「いいから、とっとと開けろ」
予想通りの声にドアを開けると、なにやら桜色の風呂敷に包まれた荷物を抱えている幼馴染みが立っていた。
「どうしたんだそれ」
「ババァがお前と食えって持ってきやがった」
「おばさんが」
向かいに住んでいた幼馴染みの母親は、小さな頃からいつも自分に優しくしてくれる人だった。
「何が入ってるんだ?」
「俺もまだ見てない」
リビングのテーブルの上で風呂敷包みを広げると、中から小ぶりの重箱が出てきた。蓋を開けると下の段にはちらし寿司が、上の段には桜餅と菱餅の形のケーキが詰められていた、
「マジかよ…」
「桃の節句か」
「つか、お前の誕生日だろ」
「お礼を言わないとな」
「あのババァ、俺の誕生日にはケーキの一つもなかったくせに」
「それは弘樹の日頃の行いが悪いんだろ」
「うるせぇよ」
「せっかくだから一緒に食べるか」
「俺はいいけど。お前はいいのかよ」
「一人じゃ食べ切れない」
子どもの頃から、誕生日にはあまりいい思い出はないけれど。
「おい秋彦、ロウソクあるか?」
「ロウソク?」
「誕生日のお祝いだろーが。ロウソクを歳の数だけ立てようぜ」
「煙草ならあるが」
「ケーキに煙草立てられるかよ!」
「細かいことを気にするな。火がついているんだから、ほぼ同じだろう」
「同じじゃねぇ」
真っ赤な顔で必死になっている弘樹を見ていると、なんだか自分の誕生日も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「しかたねぇな。今からロウソク買ってくるか?」
「いや、充分だ」
小さい部屋で過ごす初めての誕生日を春の風がふわりと流れていった。
秋彦、誕生日おめでとう。
走り続けるその先に 後日談
- 2019/11/23 (Sat)
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「ちょちょ、ちょっと待て」
津森先輩の指が俺の鼻先をグイッと押した。
「なんですか?」
「俺が聞かされているのは、お前と上條サンとの誕生日ラブラブ惚気話なのか」
「惚気てましたか?」
「完全にな。つかお前がショックなことがあったっていうから聞いてやってたのに、どこにもそんな場面出てこないのはナゼ?」
「もう話しましたよ」
「どこだよ」
なぜだか津森先輩には伝わらなかったようだ。
「ヒロさんを疑った自分がショックだったんです。情けないです」
「そこかよー。別に浮気されてなかったんだからどーでもよくねー?」
「よくないです。俺はまだまだダメなんです。もっとちゃんとした大人の男にならないと」
「聞くんじゃなかった……」
先輩が冷めたコーヒーをがぶりと飲み干した。
「でも本当に玄関開けてスニーカーを見た時はすごい驚いたんですよ」
「お前のことだからその靴の匂いを嗅いでたら上條さんのだって分かったんじゃねぇのか」
「確かに……そうですね。次からは疑う前に匂いで確認するようにします」
「やめろよお前。マジで病気だぞ、それ。そんなことより、あの人ランニングなんてしてんの?」
「そうなんです」
「意外」
「そもそも、俺が運動不足だなんて言ったせいなんですけど」
そう。元はと言えば俺のせいだ。
最終に乗るために二人で駅まで走った時、ひどく息を切らして苦しんでいたヒロさんに、俺がついうっかり運動不足だなんて言ったことをヒロさんは気にしていたらしい。
「まさかお前も一緒に走ってんの?」
「一度だけ一緒に走りましたけど、それっきりです」
「だよなー。お前に足りないのは運動じゃなくて休息だしな」
ヒロさんも同じことを言っていた。
****
「はぁ」
違う意味での運動を終えて、ぐったりとベッドに横たわっているヒロさんの背中に手を這わす。
「俺も誘ってくれたらよかったのに」
「なに……に」
「ランニングです」
「お前は別に……運動不足じゃねぇ。寝たほうがいいだろ」
「一人で走ってるなんて、危なくないですか?」
「気を……つけ、りゅ……」
むにゃむにゃと語尾が緩んだ、と思ったら寝息が聞こえてきた。
「本当に気をつけて下さいね」
乱れた髪をそっと手で梳いた。
*****
「俺はなんでもヒロさんと一緒にやりたいけれど、なかなかそうもいかないですね」
「四六時中べったりしてたらいいってもんじゃねぇだろ」
「そうですね」
「しかしランニングねぇ。今度あの人にランニングパンツでもプレゼントしちゃおっかな」
「ランニングパンツ?」
「そ。こーゆーの」
先輩がスマホの画面に出して見せてきたのは、足全体にピッタリとフィットするタイツのようなものだった。
「こんなのあるんですか」
「あの人、似合いそうだろ」
「勝手に想像しないで下さい!」
「履かせたくね?」
「それは」
ヒロさんのすんなりときれいな脚に履かせたい、そして、脱がせたい。けれどもそれは俺だけが考えていいことだ。
「スポーツ用品だし。走りやすくなるって言って贈っちゃおっかなー」
「絶対にやめて下さい。あ、先輩呼び出しかかってますよ」
「はいはい。お前も行くぞ」
「はい」
休憩を終えて歩き出す。
窓の外は秋の空に赤く色づいた葉が輝いていた。
やっぱり俺も一緒に走りたい。
ヒロさんを守るために。そして前を見て走り続けるヒロさんに追いていかれないようにするために。
次の誕生日までに少しでも近くに。
走り続けるその先に
- 2019/11/23 (Sat)
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夜勤明けに見上げた空は、未だ夜の色が残っていた。
眠っている街なみの中を、朝刊を配達するバイクと競争するように自転車をこぐ。
「一週間ぶりだ…」
早く会いたい、という想いに押されながらヒロさんの待つマンションの部屋の前にたどり着く。起こしてしまわないように慎重に鍵を開ける。
「ただいまです」
囁き声で帰宅を告げた俺の目に、見覚えのないスニーカーが飛びこんできた。
暗い玄関でじっとソレと向かい合う。
やや厚底の、色々な色が使われているスニーカーが玄関の隅に揃えられている。
こんな派手な色、ヒロさんが履いているのを俺は見たことがない。もちろん俺のでもない。
(じゃあ……誰の?)
心臓がドクドクと音を立てる。混乱して動けず固まっている俺の耳に、水音が聞こえてきた。
これは……もしかして……。いや、もしかしなくても……シャワーの音だ。
靴を脱ぎ、急いで浴室へと向かう。
ガラス戸の向こうで、誰かがシャワーを使っていた。
見たことのない靴。
明け方のシャワー。
俺がいない間に、いったい誰が俺たちの部屋に入り込んでいるんだ。そして、ヒロさんと、何をして。
浮かんでくるのは最悪の想像ばかりで、冷たくて熱い血が頭に昇ってくる。
俺は湯気がこもる浴室のドアを勢いよく開けた。
「うわっ!」
「ヒロさん?」
「ンだよ。そんなに慌てて」
洗い場で髪の毛を洗っていたヒロさんがびっくりした顔で振り向いた。
「ヒロさんこそ、何でこんな時間に」
「汗かいたから」
「汗……」
「思ったより楽しくてついやり過ぎた」
「やり過ぎって」
「つか野分。突っ立ってねぇで早くドア閉めろよ」
「はい」
ドアを閉めて浴室の中に入りこむ。
「なんで入ってくんだよ」
泡を流しているヒロさんをガバッと抱きしめた。
「おいっ!濡れるだろーがコラ」
「誰とですか」
「あ?」
「誰としたんですか」
「一人に決まってるだろ」
「一人で?」
「こんな朝早くに誰か誘えるわけねぇだろ。何言ってんだよ」
「じゃああの靴は誰の」
「靴?」
「玄関に置いてある」
「ランニングシューズのことか?」
「ランニング?」
「玄関の靴って俺のランニングシューズのことだろ」
「ヒロさんのなんですか?」
「お前のじゃなければ俺のだろ」
「でもヒロさん、ああいう派手な色履きませんよね」
「あーあれは……貰ったから」
口籠る顔を覗きこむ。
「貰った?」
「そうだよ」
靴は好みはもちろんだけど、サイズののこともあるから、そう簡単に贈り物になんてできないと思う。ということは、仲の良い人からということで。
「宇佐見さんですか?」
「今日、研究室に来て置いていったんだよ」
「なんで」
「最近走ってるって話したからだろ」
「ヒロさん、ランニング続けてたんですか?」
前に俺が運動不足を指摘したことをヒロさんが気にしていたのは知っていたけれど、最近はもうランニングはしていないと思っていた。
「夏は暑くてやめてたけど、涼しくなったから。悪ぃかよ」
「悪くないです。でもよく起きれましたね」
するりと腰回りを撫でる。ヒロさんはもともと太ってはいないし、どちらかといえば痩せ型だ。見た目を気にしてというよりも、一緒に走った俺が平気で、自分だけ息が上がったことがよっぽど悔しかったんだろうか。
「シューズを試してみたかったんだよ」
「どうでしたか?」
「走りやすかった」
「じゃあやり過ぎたっていうのは」
「調子に乗って走りすぎたんだよ。わかったならとにかく!離れろ!!出てけ!シャワーの続きをさせろ」
宇佐見さんのことだ。きっと走りやすい靴なんだろう。悔しいけれど。
「俺、マッサージしてあげます」
「は?服着たまま何を寝ぼけたこと言ってんだよアホ」
「大丈夫です」
濡れてしまった服を素早く脱ぎ捨てる。
「今日はヒロさんも休みですよね。俺もです」
「おい」
湯気を立てている背中に手をまわし、唇を吸い舌を絡める。抱きしめる腕に力をいれるとシャワーで濡れた肌がぴたりと隙間なく重なる。もっと、離れなくなるくらい、ぴったりと一つになってしまえばいいのに、と脚も絡めるように覆いかぶさり、キスを続けた。
「野分……ちょっと」
息継ぎをするように離れたヒロさんが俺の腕の中から逃れようともがいた。
「あ、俺もシャワー浴びた方が良かったですか?」
「そうじゃなくて、なんでここで」
「でも」
「誕生日に風呂で盛んなバカ」
赤い顔で睨みつけられて、盛るなと言うのは無理な話だけど、確かにこんな慌ただしいのは良くない。
「そうですね」
ひょいと抱き上げて浴室を出る。
「うおっ、なんでそうなる!降ろせ!」
「ヒロさん」
暴れて落ちそうになったヒロさんを抱き直し耳に口を寄せる。
「お誕生日おめでとうございます」
「ん」
「せっかくだから、俺もヒロさんの運動不足解消に参加したいです」
「参加?」
「一緒に運動しましょう」
「いや、お前は走る必要ねぇだろ」
「走るだけが運動じゃないですよ」
「へ?」
ベッドに降ろして、きょとんと見上げた瞳を見つめる。
「誕生日なので特別大サービスします」
「いや、いい!サービスしなくても、んッ」
喚くヒロさんの足を掴んで口づける。
どんなに高級な靴を貰ったとしても。足の先まで、全て俺のものだと言う代わりに。
眠っている街なみの中を、朝刊を配達するバイクと競争するように自転車をこぐ。
「一週間ぶりだ…」
早く会いたい、という想いに押されながらヒロさんの待つマンションの部屋の前にたどり着く。起こしてしまわないように慎重に鍵を開ける。
「ただいまです」
囁き声で帰宅を告げた俺の目に、見覚えのないスニーカーが飛びこんできた。
暗い玄関でじっとソレと向かい合う。
やや厚底の、色々な色が使われているスニーカーが玄関の隅に揃えられている。
こんな派手な色、ヒロさんが履いているのを俺は見たことがない。もちろん俺のでもない。
(じゃあ……誰の?)
心臓がドクドクと音を立てる。混乱して動けず固まっている俺の耳に、水音が聞こえてきた。
これは……もしかして……。いや、もしかしなくても……シャワーの音だ。
靴を脱ぎ、急いで浴室へと向かう。
ガラス戸の向こうで、誰かがシャワーを使っていた。
見たことのない靴。
明け方のシャワー。
俺がいない間に、いったい誰が俺たちの部屋に入り込んでいるんだ。そして、ヒロさんと、何をして。
浮かんでくるのは最悪の想像ばかりで、冷たくて熱い血が頭に昇ってくる。
俺は湯気がこもる浴室のドアを勢いよく開けた。
「うわっ!」
「ヒロさん?」
「ンだよ。そんなに慌てて」
洗い場で髪の毛を洗っていたヒロさんがびっくりした顔で振り向いた。
「ヒロさんこそ、何でこんな時間に」
「汗かいたから」
「汗……」
「思ったより楽しくてついやり過ぎた」
「やり過ぎって」
「つか野分。突っ立ってねぇで早くドア閉めろよ」
「はい」
ドアを閉めて浴室の中に入りこむ。
「なんで入ってくんだよ」
泡を流しているヒロさんをガバッと抱きしめた。
「おいっ!濡れるだろーがコラ」
「誰とですか」
「あ?」
「誰としたんですか」
「一人に決まってるだろ」
「一人で?」
「こんな朝早くに誰か誘えるわけねぇだろ。何言ってんだよ」
「じゃああの靴は誰の」
「靴?」
「玄関に置いてある」
「ランニングシューズのことか?」
「ランニング?」
「玄関の靴って俺のランニングシューズのことだろ」
「ヒロさんのなんですか?」
「お前のじゃなければ俺のだろ」
「でもヒロさん、ああいう派手な色履きませんよね」
「あーあれは……貰ったから」
口籠る顔を覗きこむ。
「貰った?」
「そうだよ」
靴は好みはもちろんだけど、サイズののこともあるから、そう簡単に贈り物になんてできないと思う。ということは、仲の良い人からということで。
「宇佐見さんですか?」
「今日、研究室に来て置いていったんだよ」
「なんで」
「最近走ってるって話したからだろ」
「ヒロさん、ランニング続けてたんですか?」
前に俺が運動不足を指摘したことをヒロさんが気にしていたのは知っていたけれど、最近はもうランニングはしていないと思っていた。
「夏は暑くてやめてたけど、涼しくなったから。悪ぃかよ」
「悪くないです。でもよく起きれましたね」
するりと腰回りを撫でる。ヒロさんはもともと太ってはいないし、どちらかといえば痩せ型だ。見た目を気にしてというよりも、一緒に走った俺が平気で、自分だけ息が上がったことがよっぽど悔しかったんだろうか。
「シューズを試してみたかったんだよ」
「どうでしたか?」
「走りやすかった」
「じゃあやり過ぎたっていうのは」
「調子に乗って走りすぎたんだよ。わかったならとにかく!離れろ!!出てけ!シャワーの続きをさせろ」
宇佐見さんのことだ。きっと走りやすい靴なんだろう。悔しいけれど。
「俺、マッサージしてあげます」
「は?服着たまま何を寝ぼけたこと言ってんだよアホ」
「大丈夫です」
濡れてしまった服を素早く脱ぎ捨てる。
「今日はヒロさんも休みですよね。俺もです」
「おい」
湯気を立てている背中に手をまわし、唇を吸い舌を絡める。抱きしめる腕に力をいれるとシャワーで濡れた肌がぴたりと隙間なく重なる。もっと、離れなくなるくらい、ぴったりと一つになってしまえばいいのに、と脚も絡めるように覆いかぶさり、キスを続けた。
「野分……ちょっと」
息継ぎをするように離れたヒロさんが俺の腕の中から逃れようともがいた。
「あ、俺もシャワー浴びた方が良かったですか?」
「そうじゃなくて、なんでここで」
「でも」
「誕生日に風呂で盛んなバカ」
赤い顔で睨みつけられて、盛るなと言うのは無理な話だけど、確かにこんな慌ただしいのは良くない。
「そうですね」
ひょいと抱き上げて浴室を出る。
「うおっ、なんでそうなる!降ろせ!」
「ヒロさん」
暴れて落ちそうになったヒロさんを抱き直し耳に口を寄せる。
「お誕生日おめでとうございます」
「ん」
「せっかくだから、俺もヒロさんの運動不足解消に参加したいです」
「参加?」
「一緒に運動しましょう」
「いや、お前は走る必要ねぇだろ」
「走るだけが運動じゃないですよ」
「へ?」
ベッドに降ろして、きょとんと見上げた瞳を見つめる。
「誕生日なので特別大サービスします」
「いや、いい!サービスしなくても、んッ」
喚くヒロさんの足を掴んで口づける。
どんなに高級な靴を貰ったとしても。足の先まで、全て俺のものだと言う代わりに。
一年に一度の
- 2019/03/03 (Sun)
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「おめでと」
「あぁ」
プレゼントを渡したその顔はどこか元気がない。
「何だよその顔」
「いったい何がめでたいのかと思ってな」
「誕生日は普通めでたいだろ」
「たかが一つ歳をとるだけだ。何も変わらない」
煙草の煙を吐きながら黙りこんだ秋彦を見守る。
ガキの頃はともかく、今は誕生日を心から祝ってくれる同居人もいるだろうに、いったいどうしたというんだろう。
「弘樹」
「ん」
「子どもの頃は大人になれば自由になれると思ってなかったか?」
「まあ、な」
「そう簡単にはいかないものだな」
有り余るほどの財産も、名声も手に入れているはずなのに、それでもどうにもできないものは、確かにある。
もしそれが、家に関することならば秋彦の場合はことさらやっかいだろう。
俺も、他人のことは言えないけれど。
それでも、やっぱり
「誕生日はめでたいんだよ。お前は今日でようやく俺と同じ歳になるんだから素直に喜べ」
「なんだそれは」
呆れたような顔はいつもの秋彦に戻りつつあって少しホッとしながらビシッと指を突きつける。
「お前の方が年下だってことを忘れんなよ。いつでも隊長は俺だ」
「お前はあいかわらずだな」
「歳をとっても変わらないのも悪くねぇだろ」
「…そうだな」
流れた時間の分だけ増えた思い出も、できた傷も、それぞれの大切な人も違う。
それでも変わらないものを今年もまた祝って。
「あぁ」
プレゼントを渡したその顔はどこか元気がない。
「何だよその顔」
「いったい何がめでたいのかと思ってな」
「誕生日は普通めでたいだろ」
「たかが一つ歳をとるだけだ。何も変わらない」
煙草の煙を吐きながら黙りこんだ秋彦を見守る。
ガキの頃はともかく、今は誕生日を心から祝ってくれる同居人もいるだろうに、いったいどうしたというんだろう。
「弘樹」
「ん」
「子どもの頃は大人になれば自由になれると思ってなかったか?」
「まあ、な」
「そう簡単にはいかないものだな」
有り余るほどの財産も、名声も手に入れているはずなのに、それでもどうにもできないものは、確かにある。
もしそれが、家に関することならば秋彦の場合はことさらやっかいだろう。
俺も、他人のことは言えないけれど。
それでも、やっぱり
「誕生日はめでたいんだよ。お前は今日でようやく俺と同じ歳になるんだから素直に喜べ」
「なんだそれは」
呆れたような顔はいつもの秋彦に戻りつつあって少しホッとしながらビシッと指を突きつける。
「お前の方が年下だってことを忘れんなよ。いつでも隊長は俺だ」
「お前はあいかわらずだな」
「歳をとっても変わらないのも悪くねぇだろ」
「…そうだな」
流れた時間の分だけ増えた思い出も、できた傷も、それぞれの大切な人も違う。
それでも変わらないものを今年もまた祝って。
ニャンニャンニャンの日
- 2019/02/23 (Sat)
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猫の日にあわせて書きたかったけど、間に合いませんでした。せっかくなのでup。
2019.2.23
2019.2.23
プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中